モニターヘッドホンといえば密閉型の物が大半ですが、DTMをする方は開放型も導入するとミックス・マスタリングが劇的に上達します!
解像度や音の広がり・奥行きといった音質面で密閉型より有利だからです。
より具体的に言うと「リバーブ等の空間系の処理やボーカルの距離感など、スピーカーで聞くとイメージと違った」というよくある事象が解決します。
今回は開放型モニターヘッドホンの中でも圧倒的な音質を誇る、SENNHEISER HD650を紹介します。
エンジニア、ミュージシャン、オーディオマニアからの評価が高く、15年以上に渡って愛されているモデルです。
目次
音の傾向
わざとらしくない広さの音場、迫力はあるが近すぎない音像、フラットな音質、高解像度。
これだけ聞くと「同じことができる密閉型ヘッドホンもあるのでは?」と思われるかもしれませんが、それまで密閉型しか使ったことのない人は衝撃を受けるレベルで高音質です。
空間の「見え方」が圧倒的に違うので、ミックスが格段に上達します。
クラシック音楽が得意と言われる本機ですが、たしかに生音系との相性が良いですね。
でも、高解像度が要求されるクラシック音楽を鳴らしきれるような良いヘッドホンですから、現代的な音楽にもバッチリ対応しています。
また、開放型ヘッドホンの中でも特に「スピーカーっぽい」自然な音作りを意識している機種です。
開放型ヘッドホンはスピーカーの代用品というわけではなく、明確に役割の違いがありますが、日本の住宅事情を考えるとこれも大きなメリットだと感じました。
いやー本当に、密閉型ヘッドホンとスピーカーだけでミックスしていた頃の作品は、全部やり直したいですね。。。
<仕様>
https://www.sennheiser.co.jp/sen.user.Item/id/7.html
型式 : ダイナミック・オープン型
周波数特性 : 10~41,000Hz
インピーダンス : 300Ω
音圧レベル : 103dB
質量 : 約260g (ケーブル重量除く)
接続ケーブル : ケーブル長3.0m(両だし)、
6.3mmステレオ標準プラグ(ストレート型)
付属品 : 3.5mm変換アダプター
保証期間 : 2年
非常にワイドレンジな周波数特性ですが、開放型ヘッドホンである以上どうしてもサブベース(約60kHz以下)の音量は下がるので、そこを逆算して調整したり、良い密閉型ヘッドホンと組み合わせるのがミックス上達のコツです。
・高音域はどこまでも伸びてゆくが、耳に痛く刺さったりしない。
・余裕と情熱を感じさせる美しい中音域
・ぼわぼわせず、上品ながらもとても存在感のある「豊か」としか言いようのない低音域。
といった印象を筆者は受けました。
低音域の調節が絶妙だからか、意外にもSkrillexやNoisiaなど「複雑に重ねられたベースがボンボン鳴る音楽」とも相性がよかったです。
AviciiやKnife PartyといったEDM系のアーティストも使っている本機ですが、その秘密がわかった瞬間でした。
音質以外の利点
人によって頭の形は違うのなんともいえないところではありますが笑
HD650の装着感は、その音のように優しく包み込んでくれる上品さがあります。
高級感あふれるベロア素材のイヤーパッドは、耳触りがとても気持ちいいです。
側圧は強すぎず弱すぎず、それでも安定感があります。
そのキンキンしない音質と相まって長時間のリスニングでも疲れない、良い装着感です。
また、モニターヘッドホンは業務で使うため、通常のリスニング用に比べて耐久性や整備のしやすさがより求められます。
本機は左右の耳から出るメインのケーブルが、ハンダ付けなしで着脱可能です。
ゆえに、断線してもすぐに交換できますし、こだわり派は「リケーブル」することもできます。
また、ネジを使わずに分解する事もできるので、整備のしやすさもバッチリです。
まとめ
SENNHEISERらしい上品で余裕たっぷりの音が魅力のHD650。
それが気に入らない!という方もいらっしゃると思いますが、長時間向き合うことになるミックス・マスタリングにおいては、この上品さが最強の武器になります。
今風のバキバキっとしたヘッドホンでずっと作業していたら耳が疲れますし、自然な音像のヘッドホンだからこそ、純粋にミックスの良し悪しがわかります。
たしかに、元々SENNHEISERのフラグシップだったこともあり値段はそこそこしますが…
開放型モニターヘッドホンとして十分すぎる性能が手に入りますので、よほど複数のレファレンスが欲しいとかでもない限りは、これをひとつ買えば十分でしょう。
ここからハイエンドヘッドホンの沼にハマって、オーディオマニア化する可能性は…かなりあるので気をつけてください。
ちなみに後継機種HD660Sが発売されていますが、より現代的な味付けで本機とはかなり異なっており、HD650も継続して生産されています。