ドラムマシン/リズムマシンの名機と現行のおすすめ10機種を紹介

ドラムマシン・リズムマシンに興味があるけど、どんな機材かよくわからないし、何を選べばよいか悩んでいませんか?

本記事ではドラムマシン・リズムマシンの歴史的な名機を振り返りながら、現行で手に入るおすすめの10機種を紹介します。

この記事を読めばドラムマシン・リズムマシンの全てがわかります!

ドラムマシン・リズムマシンとは?二つの違いは?

ドラムマシン・リズムマシンとは、シーケンス機能(=事前にプログラミングしたリズムパターンを自動で再生すること)を持っていて、かつドラムに特化した音源を使える機材を指します。※グルーブボックスと呼ぶこともあります。

実はドラムマシンとリズムマシンには明確な違いはなく、ほぼ同義の単語だと理解しても問題ないです。

使用用途としてはテクノ・ハウス系のリズムトラックを担当したり、ハードウェア機材を使ったライブセットでよく見かけますね。

またサンプラーという言葉もよく聞きますが、こちらは既存のレコードや環境音を録音して、好きなタイミングで再生する機能を持つものを指します。(ほとんどのサンプラーには録音したオーディオの編集機能がついています。)

最近はサンプラー機能付きのドラムマシン・リズムマシンもよく見かけますので、このあたりの違いが無くなってきていますね。

ドラムマシン・リズムマシンの名機を振り返る

「なんとなくドラムマシン・リズムマシンがどんな機材かわかったけど、実際にどんな使い方をするの?」とイマイチ想像がつかない方に、ここから音楽業界の歴史において重要な役割を果たしていたドラムマシン・リズムマシンを紹介しながら、この機材が生み出すマジックを見ていきましょう。

Roland / TR-808

https://en.wikipedia.org/wiki/Roland_TR-808

説明不要の名機ですね。ローランドから発売されていたTR-808というアナログシンセを搭載した8ポリフォニックのドラムマシンです。

テクノやハウス系だけではなく、ポピュラーミュージックやヒップホップなど幅広いジャンルで使用されており、世界一有名なドラムマシンと言っても過言ではありません。
日本では808(やおや)の愛称で呼ばれていたり、TR-808がプリントされたTシャツが販売されたりと、その独特のルックスも含めてアイコニックな機材として親しまれています。

アナログならではの太い音や特徴的なカウベルの音など一聴しただけで、808のサウンドだとわかります。
他にもTR-909やTR-606などの兄弟機種も存在し、特にTR-909の硬いキックや芯のあるハイハットの音はテクノなどのクラブミュージック系で好まれて使用されています。

TR-808を使用した代表的な曲

Linn Electronics / LinnDrum

次に紹介するのはRoger Linn(ロジャー・リン)氏によって設立されたLinn ElectronicsのLinn Drumです。

先ほどのT-808がアナログシンセによって音を生成しているのに対して、このLinn Drumはデジタルサンプリング方式で発音しています。

生音をサンプリングしているため本物のドラムキットに近い音が出ますが、ビットレート8bitということもあり、少し音が劣化したローファイな雰囲気が特徴です。

Michael JacksonやPrinceの楽曲でも使用され、まさに80年代のポップスを支えた名機と言えるでしょう。

Linn Drumを使用した代表的な曲

Oberheim /DMX & DX

こちらはシンセサイザーで有名なOberheim社から発売されていたDMXとその後継機のDXというドラムマシンです。※DMXはDXの機能を簡略化した後継機です。

Linn Drumと同様に当時は本物のドラムキットの音に寄せるためにデジタルサンプリング方式のドラムマシンが流行っており、このDMX/DXもEPROMという記録媒体に保存された音を鳴らすことができました。

またDMXの革新的な部分として、スネアやキックなどの各楽器のチューニングを変更したり、スイングでグルーヴを出したりと、まるで人間のドラマーが演奏しているかのような表現力を手に入れました。

Oberheim DMXを使用した代表的な曲

E-mu / SP-1200

こちらのSP1200と次に紹介するAKAI MPCは厳密にはサンプラーに分類されますが、シーケンサー(リズムパターンのプログラミング機能)も搭載されているため、一応本記事でも紹介します。

このSP1200は80年代後期に発売されたこともあり、ビットレートが12Bit/サンプリングレートが26.040kHz、約10秒のサンプリングタイムと音質面や使い勝手の部分で強化されています。

そのためドラムサンプルのワンショットではなく、JazzやR&Bのレコードを小節単位でサンプリングする等の使い方でHip Hopプロデューサーに愛用されていました。

音質の面でもLinn DrumやDMXより強化されているとはいえ、32Bitが当たり前の現代のデジタルサンプリングと比較すると原音にローファイ感が残ります。

他のサンプラーにも言えることですが、技術的な制約によって逆に唯一無二の音質になっているのが興味深いですね。

SP-1200を使用した代表的な曲

AKAI / MPC2000 & MPC3000

https://en.m.wikipedia.org/wiki/Akai_MPC

こちらはHip-Hopファンなら全員が知っているAKAIのMPCシリーズです。

上記の写真はMPC2000という1997年に販売されたモデルで、サンプリングされた音源をパッドで叩いて演奏するスタイルでHip-Hopの憧れの機材として君臨しています。

今でもMPCシリーズの新製品は出ていますが、技術の進化によって音質が“向上してしまった“ため、唯一無二のローファイな音が出せるMPC2000やMPC3000を使い続けているプロデューサーも多いです。

他のサンプラーやドラムマシンと違って4×4で配置された16個のパッドがリアルタイムな演奏に向いていたこともあり、世界的な大ヒット商品となりました。

MPCシリーズを使用した代表的な曲※数え切れないほど多くの曲に使われているので筆者のお気に入りを紹介します。

AKAI MPCを使用した代表的な曲

現行のおすすめドラムマシン・リズムマシン10機種

さて、歴史的な名機を振り返ってみましたが、実は先ほど紹介した機種は全て生産終了品になっており、公式サポートが終了していたり、中古でも異常なほどのプレミア価格がついていたりと、新しくドラムマシン・リズムマシンを購入する人にとっては現実的な選択肢ではありません。

そのためここからは現行かつ定価で手に入るドラムマシン・リズムマシンのおすすめを10機種を紹介していきます。

KORG ( コルグ ) / volca beats

とりあえずドラムマシン・リズムマシンを使ってみたい初心者の方におすすめなのがこのKorgのvolca beatsです。

この大きさと値段でアナログ音源+PCM方式のサンプリング音源に対応しており、太いキックやスネアなどの王道サウンドから、飛び道具的なサウンドまでに一通りカバーできます。

またドラムマシン・リズムマシンの類って基本サイズが大きいのですが、volca beatsは文庫本サイズかつ電池駆動ができるので場所を選びません。

16ステップのシーケンサーと6つの音源パート、内蔵スピーカー、MIDI端子と標準以上のスペックを持っています。

BEHRINGER ( ベリンガー ) / RD-6

こちらはRolandのTR-606という名機をBehringerが現代に蘇らせたクローンモデルです。

オリジナルのTR-606はTR-808同様中古市場でプレミア価格が付いていますが、こちらのRD-6は2万円ちょっと出せば買える価格です。

オリジナルのTR-606には無かったディストーションやランダムでリズムパターンを生成する機能など、現代風にスペックが強化されているのが嬉しいですね。

音に関しては直球のアナログサウンド(ハイハットのみPCMによるサンプリング音源)で前述のvolca beatsよりもキレのある太い音が出ます。

ARTURIA ( アートリア ) / DrumBrute Impact

こちらはArturiaのDrum Brute Impactというモデルで、アナログ音源+FM方式のドラムサウンドを搭載しています。

独自の”Color”というボタンを押すことで、瞬時に特定のパートに歪みを加えたり、ステップ単位でディケイやトーンの変化を加えられたりと、音色の守備範囲がとにかく広いです。

またキックサウンドの評判が良く、硬めキックからヒップホップ的なサスティン長めのキックまで設定次第で色々な音が出ます。

単純にドラムシーケンサーとして扱いやすいのと、MIDIノートを出力して外部音源を鳴らせるのが汎用性高いですね。

ROLAND ( ローランド ) / TR-6S

こちらはRolandから発売されているTR-6Sになります。

ローランド独自のACBという技術によってアナログ回路をデジタルで再現した発音方式で、往年の名機であるTR-808やTR-909のサウンドが使えます。

またSDカード経由でユーザが持っているオーディオファイルが追加できたり、FM音源も使えるので、出せない音はないのでは?というほどにマルチプレイヤーです。

フィルター、ビットクラッシャー、リバーブ、ディレイなどのエフェクトが豊富に搭載されているので、ライブでも制作でもリズムトラックはこれ一つで十分過ぎるほどに事足りてしまいます。

ROLAND ( ローランド ) / TR-8S

現在のRolandのドラムマシン・リズムマシンの中で最強のスペックを誇るのがこのTR-8Sです。

TR-6Sとサウンドエンジンは同じでも、音色を調節するツマミが3個、トラック数が11個と基本スペックが高いです。※TR-6Sはサイズの都合上1つのツマミで調節、トラック数が6個と少し頼りないです。

またTR-8Sの方は外部入力が付いているので、他のシンセサイザーを入力してTR-8Sのリバーブをかけるといったエフェクター兼ミキサー的な使い方もできます。

ELEKTRON ( エレクトロン ) / Syntakt STK-1

こちらはスウェーデンの楽器メーカーElektronから発売されているSyntaktになります。

今回紹介する機種の中で唯一アナログとデジタル両方の発音方式を持っていて、力強いアナログサウンドと、エグみのある金属音やノイズなどのデジタルが得意とするサウンドを両方使えます。

具体的には8つのデジタルトラック、3つのアナログドラムトラック、1つのアナログシンバルトラックで合計12トラックに対して、合計35種類を超えるサウンドエンジンと最強スペックを誇ります。

シンセ用のサウンドエンジンも含まれているので、ベースやリード、さらには和音まで出せるということで、これ一台で曲が作れるレベルですね。※もちろんエフェクターも付いています。

ELEKTRON ( エレクトロン ) / Analog Rytm ADS-8MK II

続いて同じElektronのAnalog RYTM MK2を紹介します。

機種名にもあるようにアナログ音源に特化したドラムマシン・リズムマシンですが、先ほどのSyntaktとの違いとしてUSB経由で内蔵ストレージに保存したオーディオサンプルを扱え、さらに外部入力から直接サンプリングができます。

本体サイズが大きいため、音色やエフェクトのプリセットを瞬時に呼び出すパッドが付いていたり、シーケンサー周りの細かい操作性がSyntaktに比べて格段に優れています。

Elektronのどの機種にも共通することですが、RolandやKorg等の他社と比較してシーケンサーの機能が豊富です。

※例えば”パラメーターロック”と呼ばれるステップ毎にエフェクトや音色パラメーターを記録する機能が有名です。

とにかく最強スペックのドラムマシン・リズムマシンが欲しい方にはこのAnalog RYTMが最もおすすめです。

ACIDLAB ( アシッドラボ ) / Miami

こちらはACIDLABから発売されているMiamiというTR-808のクローンモデルです。

やはりTR-808は中古市場でプレミア価格で取引されていたり、ユニクロとコラボTシャツが発売されたりと、ドラムマシン・リズムマシン界の王様と言っても過言ではありません。

音についてもアナログならでは独特の揺らぎや音圧が唯一無二として評価されていますが、このMiamiはその808サウンドを同等の音源回路で再現しています。(再現度に関しては前述の本家TR-6S, TR-8SのACB回路を上回ります。)

キックのディケイタイムがオリジナルTR-808の2〜3倍まで拡張されていたり、MIDI-IN端子の搭載により外部機器やDAWとの同期が可能になっていたりと、現代スペックとして強化されています。

AKAI ( アカイ ) / MPC LIVE 2

こちらは純粋な意味のドラムマシン・リズムマシンとは少し異なりますが、AKAIのMPC LIVE 2というMPC直系のパッドを搭載したリズムマシン兼サンプラーになります。

完全なスタンドアロンのサンプラーとしてスピーカーやシンセ音源、エフェクターを内蔵しており、DAWと同等レベルのことができます。

もちろんテクノやハウスも作れますが、サンプリング主体でHipHop的なトラックを作りたい方もおすすめです。

TEENAGE ENGINEERING ( ティーンエイジ エンジニアリング ) / PO-32 tonic

最後に一つ飛び道具として、ガジェット系シンセで有名なTeenage EngineeringのPocket OperatorシリーズのPO-32を紹介します。

電卓やゲーム機を連想させるこのボディにハマる人も多いでしょう。

オモチャみたいなデザインですが、アナログ系のマシンでは絶対に再現できないデジタルの趣が感じられるサウンドが出ます。(ゲーム機能8bitのピコピコ音が太くなった感じでしょうか)

初めてのドラムマシン・リズムマシンの入門としても、今あるシステムの追加する飛び道具としてもおすすめです。

現行ドラムマシン・リズムマシンのスペック比較表

ここまで10機種紹介してきましたが、数が多いため何を基準に選ぶべきか迷っている方も多いと思います。

そこでドラムマシン・リズムマシンを選ぶ際に参考になるスペックとそれらの比較表を用意しました。

メーカー/機種パラアウト発音方式サンプリングエフェクト
KORG  / volca beats×アナログ××
BEHRINGER  / RD-6アナログ×
※歪み系のみ
ARTURIA  / DrumBrute Impactアナログ×
※歪み系のみ
ROLAND / TR-6S
※USB接続でのみ
パラアウトが可能
デジタル×
※SDカードから
音源を追加可能
ROLAND  / TR-8S
※USB接続でも
パラアウトが可能
デジタル×
※SDカードから
音源を追加可能
ELEKTRON  / Syntakt STK-1
※USB接続でのみ
パラアウトが可能
デジタル/
アナログ
×
ELEKTRON  / Analog Rytm MK II
※USB接続でも
パラアウトが可能
アナログ
ACIDLAB  / Miamiアナログ××
AKAI / MPC LIVE 2×デジタル
※スライスや
ピッチの変更が可能
TEENAGE ENGINEERING / PO-32×デジタル×
※機種名をクリックすると記事内の解説部分に移動します。
  • パラアウト
    パラアウトとは通常のメイン出力に加えてハイハットやスネア、キックといった各パートごとに単独の出力端子を持っていることです。
    DAWへ録音するときにはパート別にEQやコンプをかける場面が多いと思いますので、制作メインの方におすすめです。※USB接続でパラアウトが可能な機種はケーブル一本で済むため非常に便利です。
  • 発音方式
    音の生成方法には大きく分けてアナログとデジタルの二つがあり、それぞれ違いは以下の通りです。
    ・アナログ:太く、パンチが効いている音が作りやすい
    ・デジタル:飛び道具的なエグい音が作りやすい、またアナログの挙動をシミュレートしたものもある
  • サンプリング
    サンプリングとは外部の記録媒体(SDカードなど)や直接録音して取り込んだ音源を使うことです。
    例えばTR-808とTR-909のサンプリングファイルを持っていれば、 ハイハットだけ808を使用してキックとスネアは909を使う、みたいなことができます。
  • エフェクト
    歪み系や空間系などのエフェクトを搭載している機種もあります。
    ギター用のペダルを接続する場合もありますが、外でライブをする場合だと荷物が増えるためエフェクトを内蔵していると便利です。
    ※機種によって搭載されているエフェクトの種類が異なります

まとめ

いかがでしたでしょうか?

国内・海外のメーカーから数多くのドラムマシン・リズムマシンが発売されていますが、プレイスタイルや求めている音によって選ぶべき機種は異なります。

絶対的な正解というものは存在しませんが、本記事が少しでもドラムマシン・リズムマシン選びの参考になれば幸いです。

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