Elektron/Analog Rytm MKII レビュー 最強のドラムマシン

今回はElektron/Analog Rytm MKIIを紹介します。個人的にこれを超えるドラムマシンは無いんじゃないかと思うくらいお気に入りです。

この記事では、そのAnalog Rytmの魅力を徹底的に掘り下げてみます。

Analog Rytm MKII – 概要と特徴

Analog Rytm MKIIは、スウェーデンのシンセメーカーのElektron社が開発したドラムマシンです。

アナログシンセサイザーとサンプラーを組み合わせたハイブリッドな構成で、8つのアナログドラム音源と12のサンプル音源を搭載している最強スペックのドラムマシンです。(同時発音数は8音)

また、後述の強力なシーケンサー機能により、多彩なリズムパターンの作成・リアルタイムパフォーマンスができます。

音質について

音質を評価すると、アナログシンセから作り出されるコシがあるドラムサウンドが最高です。外部から取り込んだオーディオサンプルも扱えるので音作りの幅が広く、出せない音は無いと言ってよいでしょう。

一応トラックの割り振りは以下の通りですが、各トラックが複数のシンセエンジンに対応しているので、1.Bass Drumと2.Snare Drumの両方にキックを割り振る、なんてことも可能です。

1.Bass Drum
2.Snare
3.Rim Shot & 4.Clap
5.Bass Tom
6.Low Tom
7.Mid Tom & 8.High Tom
9.Closed Hihat & 10.Open Hihat
11.Cymbal & 12.Cowbell
※&でまとめているものは、同じエンジンをシェアしているため同時発音はできないです

各トラックにシンセとサンプラーの両方が搭載されているので、2つをレイヤーさせても良いですし、ハイハットだけは909のサンプル音源を鳴らす、など組み合わせは無限大です。
※サンプル音源は、本体ストレージに音源を転送する方法以外に、外部オーディオ入力からサンプリングできます。

ドラム系のサウンド以外にデュアルオシレーターのシンセエンジンが使えるので、ドラム+ベースやリードサウンドもカバーできます。
(なんとこのシンセエンジンはリングモジュレーターやFMも使えるので、金属的な音やノイズ系のFXサウンドを生成するのに便利です!)

シーケンサー機能

Analog Rytm MKIIのシーケンサー機能は、最大64ステップのパターンを最大128パターンまで保存することができます。特筆する点としては、やはりElektronのアイデンティティである「パラメータロックでしょう。

「パラメーターロック(Parameter Lock)」とは、Analog Rytm MKII、Syntakt、Digitaktなど、多くのElektron製品に搭載されている機能で、シーケンスの各ステップに、特定のサウンド、エフェクト、あるいはパラメータ設定などを個別に割り当てることができます。

例えば、パラメーターロックを使って、特定のステップにフィルターカットオフやエフェクトのセンド量などのパラメータ設定を変更することができ、独自でダイナミックなサウンドを作り出すことができます。
※百聞は一見にしかず 参考動画はこちら↓(21:16~)

ベースの音程やローパスフィルターをステップごとに変化させています。全てのトラックの全ての値を、ステップ毎に変えられるので、リズムパターンの展開に困ることは無いですね。

パラメータロック以外にも、三連符、マイクロタイミング、スウィング、リトリガー(1ステップで32や64回音をトリガーできる連打機能)など、高性能なシーケンサーにあるものは全て揃っています。

他にはAKAI MPCのようにパッドを叩いて音をリアルタイムで打ち込めたり、このパッドを使ってトラックミュートや、複数トラックにまたがっての各パラメータやエフェクトの設定を呼び出せたりできます。
(パッドを押す力によって、ディレイやリバーブのセンド量など任意のパラメーターをコントロールできるのがお気に入りです。)

エフェクト

Analog Rytm MKIIはエフェクトも充実しています。

センドエフェクトとして、ディレイ、リバーブ、ディストーション、アナログコンプがある他、各トラックにエンベロープフィルターやオーバードライブが搭載されています

欲を言えば、コーラスやフェイザー、フランジャーなどの揺れ系があれば120点ですが、これだけあれば十分ですね。

接続端子・拡張性

Analog Rytm MKIIは、オーディオアウトだけでなく、Overbridgeという専用のソフトウェアを使ってUSB接続によるパラアウトも可能です。

このOverbridgeが非常に優秀で、プリセット管理や大きなメニューでパラメーターの編集ができ、プラグイン感覚でAnalog Rytmの音源が使えるんですよね。

もちろん各トラックにパラアウトのライン端子も付いていますが、ケーブル一本でDAWにパラアウトで出力できるのは偉いですね。

また、Analog Rytm MKIIはMIDI In&Out、Expペダルだけでなく、外部オーディオとサンプリング用の入力がそれぞれ備わっています。これらの入力はステレオ入力ですが、内部でモノラルに変換されます。

同期用のMIDIやExp/CV用の端子
オーディオアウトプット端子

Analog Rytm MKIIのプロユーザーからの評価・評判

Elektron製品は世界中で人気で、Analog Rytm MKIIも多くのミュージシャンに愛用されています。エレクトロニックミュージックの制作・ライブに向いてる機種なので、その界隈のユーザーが多いですね。

【Analog Rytm MK1を使用しているミュージシャン】出典:Equipboard
・Thom Yorke
・Aphex Twin
・Boys Noise

【Analog Rytm MKIIを使用しているミュージシャン】出典:Equipboard
・Orbital

Analog Rytm MKIIと他のドラムマシンとの違いを比較

本格的なドラムマシンとして、比較対象に上がるのはKORG/Drumlogue、Roland/TR-8Sでしょうか。どちらも素晴らしいシンセですが、以下のような違いがあります。

【Roland/TR-8S】
・USBオーディオ出力がある
・各トラックにボリュームフェーダーがある
・外部オーディオファイルを追加可能(本体でのサンプリングは不可)
・アナログモデリングのACB音源が優秀
・HouseやTechnoに向いている音が得意
・シーケンサーが多機能ではない

【KORG/Drumlogue】
・キック、スネア、タムがアナログシンセで太い音が出せる
・Logue SDKというシステムでサードパーティや他のユーザーが作ったシンセやエフェクトを追加可能
・アナログの太さはあるが音に少し癖がある

実際の使い勝手を比較すると以下のような感じでしょうか。
好みもありますが音はダントツでAnalog Rytmだと思います。

音作りの幅;Analog Rytm>>>TR-8S=Drumlogue(この二つは好みかも)
シーケンサーの機能:Analog Rytm>>Drumlogue>>TR-8S
エフェクトの充実さ:Drumlogue>TR-8S>Analog Rytm

他のElektron製品との違いを比較

同じElektronの製品でドラムマシンとして使うなら、SyntaktやDigitaktも候補に上がるでしょう。以下簡単に違いを説明します。

Analog Rytm:ドラム音源特化マシン、サンプリング+シンセ音源あり(特化マシンには劣る)
Syntakt:シンセエンジンが充実、サンプリングなし
Digitakt:サンプリング特化マシン、アナログシンセなし

【Elektron/Syntakt】

SyntaktはAnalog Rytmと同じアナログシンセを一部搭載しており、さらにコードやリードシンセ用のサウンドエンジンも持っています。

デジタルシンセも入っているので、音作りの幅はRytmより広いと思います。

【Elektron/Digitakt】

一方DigitaktはElektronのシーケンサーの遺伝子を持つサンプラーと言うのが適切ですかね。

Analog Rytmにもサンプラーはありますが、Digitaktにはスライサーやリピッチが付いているので、ヒップホップ的な使い方やブレイクビーツの制作に向いています。

またSyntaktやDigitaktは本体サイズがコンパクトがゆえにボタンが少なく、2つのボタンを同時押しする場面が多いですが、Analog Rytmの方は操作性にゆとりがありますね。

ただその分本体サイズと重さがネックになっているので、Analog Rytmは制作向きだと思います。

またSyntaktやDigitaktには外部音源をMIDIで操作する用のトラックがありますが、Analog Rytmにはありませんので、マシンライブで使いたい場合は他の機材との組み合わせを考慮する必要があります。

Analog Rytm MKIIとMKIの違い

現行品ではありませんが、初代のAnalog Rytm(通称MK1)も存在します。

主な違いとしては、MK1には外部オーディオからのサンプリング機能や任意のパラメータをアサインできるパフォーマンスノブがありません。

またMKIの出音は少しパリッと張り付いた音で癖があります。好みもありますが、多くの人がMKIIの方が良い音と感じると思います。
MKIのメリットとしては中古価格が安いことと、本体サイズがコンパクトなことですかね。

Analog Rytm MKIIの購入前に知っておきたいポイント

注意点というほどではありませんが、購入前に以下のポイントを把握しておきましょう。

価格

Analog Rytm MKIIの値段ですが、昨今の世界情勢の影響もあり、値段がどんどん高騰しています。私が購入した後に少なくとも4回値上げしていますし、外的環境を考慮すると今後も値下げする要素は無いので、欲しい場合はさっさと購入しちゃうのが吉です。

また本体カラーにはグレーとブラックがありますが、機能に違いは無いのでお好みでどうぞ。

出典:https://www.elektron.se/jp/analog-rytm-mkii-explorer
出典:https://www.musicradar.com/reviews/elektron-analog-rytm-mkii

使い方や操作方法について

このドラムマシンは機能が豊富なので、操作方法について覚えることが少しばかり多いです。
ただ、Elektronのシンセ全体に共通することとして、直感的かつ合理的なユーザーインターフェースということもあり、慣れたらこれ以外のシーケンサーを使えなくなるほどです。

本体付属の説明書で覚えても良いのですが、以下のソースを活用するとより効果的ですね。

・ユーザーコミュニティ(英語)https://www.elektronauts.com/news
・2ch Elektron 総合スレ(日本語)
・Youtube※以下は英語のチャンネルですが、日本語字幕が付けられます

Analog Rytm MKIIのまとめと評価

Analog Rytm MKIIのRYTMはRhythm(リズム)から由来していることもあって、ドラムマシンとしては必要な機能は全て備えつつ、シーケンサーのパラメーターロック等尖った機能もある完璧な機種だと思います。

ただ製品の方向性が明確な分、購入前にはAnalog Rytm MKIIにどんな役割を持たせるのか決めておくと、他の手持ちのシンセとの棲み分けが上手くいきます。

Analog Rytm MKIIの長所と短所、おすすめする人

Analog Rytm MKIIの長所と短所をまとめると以下のような感じです。

長所:アナログならではの太い音、オーディオサンプルも使える、最高峰のシーケンサー機能、USBでパラアウトができる
短所:本体が大きい・重い、コードやメロディの打ち込みは苦手(鍵盤入力が無いのと、シンセエンジンがモノフォニック専用)

結論、制作やライブにおいてドラム特化のシンセサイザー/シーケンサーを探している人におすすめです。

コードやメロディに積極的に使えるシンセを探している人は同じElektronのSyntaktやAnalog Four、RolandのSH-4dなどを選びましょう。

総合評価

Analog Rytm MKIIはまさに最強のドラムマシンで、3年以上使用してきて、他のドラムマシンに目移りしたことは一度もありません。とにかくドラムマシン選びに妥協したくない人におすすめです。

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